299 花岡ちゃんの夏休み
花岡ちゃんの夏休み
清原なつの
ハヤカワコミック文庫
2006年
この漫画を話題にした記事をあるブログでみつけたのは1年8ヵ月くらい前でしたが、昨年復刊されていたことを不覚にも知らないままでした。
1977年『りぼん』初掲載以来、ポツポツと登場していた花岡ちゃんシリーズは見逃しませんでした。といっても小・中学生当時、我が家は通常は漫画本購入禁止だったので(お正月だけ許された・笑)、漫画の殆どは友人に借りていました。そうです、そうやって気になる作品は友人を通して知ることができ、いつも行く病院の待ち合い室(幼い頃は病弱だった!)の『少年チャンピオン』のチェックもかかさなかったのです(笑)。
文学や絵画の香りがちりばめられた清原なつのの漫画に、中学生当時の自分は憧れのようなものを抱いていたことを思いだしました。その魅力はかわいいだけの少女漫画の概念の域を越えています。私は花岡ちゃんのようにメガネでもなく、大学生にもなれませんでしたが、どこかで花岡ちゃんのような不器用だった20歳前後の自分を、重ね合わせて見てしまうところがあることに気がつくのでした。
さて、文庫になった『花岡ちゃん〜』ですが、元日に散歩がてら立ち寄った古本屋で発見ししました。そして本書の奥付広告頁で嬉しいことに清原なつの漫画がたくさん復刊されていることを知ります。一度は手放したものや貸して帰ってこなかったコミックをまた読むことができる・・・と思うと嬉しいかぎりです。
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by tsukinoha
| 2007-01-06 07:10
| 本
298 新年つれづれ
早いもので、連れは今日から、私は明日が仕事初めです。学童保育は明日からにしてあるのですが、娘は児童館へさっさと遊びに行ってしまいました。年賀状は・・・と言うと自分に似た方が多いのか、元日に一気に届くというよりは、3日、4日経ってじわじわと増えてきています。ということは・・・出していない方から遅れて届くと、さらにこちらからの返事の賀状が遅くなるということです!
そんななか、今となってはまったくお会いする機会を失ってしまった方からの便りが心に染みます。いわゆる年賀状のつきあいなのかもしれませんが、そこには細々としてはいるけれど貴重な一本の糸が結ばれていると思えるようになりました。
元日は実家に新年の挨拶。
昨年病が発覚した父は病人と思えないくらい顔の艶がよく少し安心するとともに同時に母がちょっと疲れ気味かな・・と胸の片隅に心配の種がくすぶっています。それでも父や母の昔話・・(特に戦後直後の)などで盛り上がりました。案外親の若い頃の話は聞いているようで聞いていないこともたくさんあります。そこには母なりの父なりの「昔の話(苦労話)したってしようがないから」という思いがあるようです。しかしそれらの出来事は、単なる自分の親の話を越えて、その時代の若者たちの姿を知るような気持ちに襲われるのです。
小6で終戦を迎え、地域の米問屋だった家が没落してから農業をはじめ、中学もろくに通えなかったという宮城出身の母は、戦前に自分の父親が東京の出張のたびに持ち帰った歌舞伎の解説本を読むのが楽しみで、その本でいろいろな漢字を憶えたこと、それがきっかけで歌舞伎が大好きになったことなど、はじめて知りました。鹿児島出身の父は、魚の行商の母親を手伝いながら(早くに父親が亡くなった)朝昼晩と毎日がさつまいもの生活。30年以上禁さつまいもだったのが、最近になって口にした焼き芋がおいしかったと言っていました。
あの日一夜にしてすべてが変わってしまった。そして・・・苦労は自分たちだけじゃない、日本中がそうだったんだよと教えてくれるのでした。
そんななか、今となってはまったくお会いする機会を失ってしまった方からの便りが心に染みます。いわゆる年賀状のつきあいなのかもしれませんが、そこには細々としてはいるけれど貴重な一本の糸が結ばれていると思えるようになりました。
元日は実家に新年の挨拶。
昨年病が発覚した父は病人と思えないくらい顔の艶がよく少し安心するとともに同時に母がちょっと疲れ気味かな・・と胸の片隅に心配の種がくすぶっています。それでも父や母の昔話・・(特に戦後直後の)などで盛り上がりました。案外親の若い頃の話は聞いているようで聞いていないこともたくさんあります。そこには母なりの父なりの「昔の話(苦労話)したってしようがないから」という思いがあるようです。しかしそれらの出来事は、単なる自分の親の話を越えて、その時代の若者たちの姿を知るような気持ちに襲われるのです。
小6で終戦を迎え、地域の米問屋だった家が没落してから農業をはじめ、中学もろくに通えなかったという宮城出身の母は、戦前に自分の父親が東京の出張のたびに持ち帰った歌舞伎の解説本を読むのが楽しみで、その本でいろいろな漢字を憶えたこと、それがきっかけで歌舞伎が大好きになったことなど、はじめて知りました。鹿児島出身の父は、魚の行商の母親を手伝いながら(早くに父親が亡くなった)朝昼晩と毎日がさつまいもの生活。30年以上禁さつまいもだったのが、最近になって口にした焼き芋がおいしかったと言っていました。
あの日一夜にしてすべてが変わってしまった。そして・・・苦労は自分たちだけじゃない、日本中がそうだったんだよと教えてくれるのでした。
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by tsukinoha
| 2007-01-04 16:18
| 随想
296 さよなら、ありがとう。2006年!
昨日やっとプリントした年賀状に一気に宛名書きを済ませました。
気がつけば今年もあと1日。公私ともにいろいろと変化のあった1年でした。
ここではブログ記事への振り返りをしてみます。
*例年になくたくさん展覧会に足を運んだ
これでも・・・です。私にしてはということで。
印象に残ったものを5つ上げてみたいと思います。
●高島野十郎展(三鷹美術ギャラリー)
高島野十郎という絵描きをはじめて知ります。画壇と無縁だった画家の気迫ある絵に圧倒。
●花鳥 愛でる心、彩る技(1〜5期)(宮内庁三の丸尚蔵館)
5回に渡って通いました。素晴らしい動植綵絵を堪能。
●プライスコレクション 若冲と江戸絵画展(東京国立博物館)
光のうつろいを表現した演出に感激。
●国宝風神雷神展(出光美術館)
たくさんの画集などで何度も何度も見てきた風神雷神。ほんものに感涙。
●仏像 一木に込められた祈り(東京国立博物館)
もう言葉を失いました。ありがたい体現をさせていただいた。
*本もわりと読めた。かな?
いちばん読書が進むのは・・・通勤電車の中です!今年読んだもので印象に残った本5册(絞るのが難しい!)を記しておきます。
●煎茶への招待/小川後楽・著/日本放送出版協会
文人と言えば煎茶の文化。この書籍もう手に入らないかもしれません。ふたたび図書館で借りてこようかな。
●国民のための百姓学/宇根豊・著/家の光協会
農について、社会についてさまざまに考えさせられる一冊。国民全員に読んでほしい本!と切に思いました。
●古代から来た未来人 折口信夫/中沢新一・著/NHKテキスト
「知るを楽しむ」のテキストですが、読みごたえあります。「冬(ふゆ)」が古代語の生き残りであるというのは興味深い。これから毎年冬を迎えるたびに思いを辿ることでしょう。“古代”へ。
●日本の音/小泉文夫/平凡社
しょっちゅう音を耳にしているのに、音については知らないことだらけ。目に見えない文化について考えさせられます。
●能楽への招待/梅若猶彦・著/岩波新書
年末最後の読書は図書館で借りてきた本。能楽最高の美的観念は「幽玄」ではない!?その道の専門の著者の言葉にひとつひとつ頷きながら読みました。
ブログの方もマイペースながら続けることができました。
おおよそ一般的な“デザイン”のイメージとはかけ離れ、また記録的な記事が多いこのブログです。いただいたコメントで学ばせていただくことも多々ありました。読んでいただいたすべてのみなさまに深く感謝したいと思います。ありがとうございました。
どうぞよい年をお迎えください。
気がつけば今年もあと1日。公私ともにいろいろと変化のあった1年でした。
ここではブログ記事への振り返りをしてみます。
*例年になくたくさん展覧会に足を運んだ
これでも・・・です。私にしてはということで。
印象に残ったものを5つ上げてみたいと思います。
●高島野十郎展(三鷹美術ギャラリー)
高島野十郎という絵描きをはじめて知ります。画壇と無縁だった画家の気迫ある絵に圧倒。
●花鳥 愛でる心、彩る技(1〜5期)(宮内庁三の丸尚蔵館)
5回に渡って通いました。素晴らしい動植綵絵を堪能。
●プライスコレクション 若冲と江戸絵画展(東京国立博物館)
光のうつろいを表現した演出に感激。
●国宝風神雷神展(出光美術館)
たくさんの画集などで何度も何度も見てきた風神雷神。ほんものに感涙。
●仏像 一木に込められた祈り(東京国立博物館)
もう言葉を失いました。ありがたい体現をさせていただいた。
*本もわりと読めた。かな?
いちばん読書が進むのは・・・通勤電車の中です!今年読んだもので印象に残った本5册(絞るのが難しい!)を記しておきます。
●煎茶への招待/小川後楽・著/日本放送出版協会
文人と言えば煎茶の文化。この書籍もう手に入らないかもしれません。ふたたび図書館で借りてこようかな。
●国民のための百姓学/宇根豊・著/家の光協会
農について、社会についてさまざまに考えさせられる一冊。国民全員に読んでほしい本!と切に思いました。
●古代から来た未来人 折口信夫/中沢新一・著/NHKテキスト
「知るを楽しむ」のテキストですが、読みごたえあります。「冬(ふゆ)」が古代語の生き残りであるというのは興味深い。これから毎年冬を迎えるたびに思いを辿ることでしょう。“古代”へ。
●日本の音/小泉文夫/平凡社
しょっちゅう音を耳にしているのに、音については知らないことだらけ。目に見えない文化について考えさせられます。
●能楽への招待/梅若猶彦・著/岩波新書
年末最後の読書は図書館で借りてきた本。能楽最高の美的観念は「幽玄」ではない!?その道の専門の著者の言葉にひとつひとつ頷きながら読みました。
ブログの方もマイペースながら続けることができました。
おおよそ一般的な“デザイン”のイメージとはかけ離れ、また記録的な記事が多いこのブログです。いただいたコメントで学ばせていただくことも多々ありました。読んでいただいたすべてのみなさまに深く感謝したいと思います。ありがとうございました。
どうぞよい年をお迎えください。
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by tsukinoha
| 2006-12-30 07:24
| 随想
295 ジャパノロジー〜のつづき
たまたま新聞欄で発見して知ったジャパノロジーという番組。伝統文化から最新のトレンドまで幅広い分野を世界に向けて発信する番組だそうです。司会はピーター・バラカンと菊地真美。日本語と英語のニカ国語放送ですが、実際のトークは英語。「若冲と江戸絵画」のテーマではスタジオにプライス夫妻を迎えてのトークが中心でした。話はこれまで放送されてきたものとほぼ重複する内容でした。「新日曜美術館」でも流れたプライス邸のVTRを交えておよそ30分程度。
プライス展は東京に続いて京都の展覧会を終えたところです。東京展のはじまった頃に出かけた者としてはなんだかもうすっかり過去の出来事になってしまいましたが、来年は九州、名古屋に巡回。
貴重だったのはこれまでに聞くことのなかった悦子夫人のお話です。
「50〜60年前は普通の家に床の間があって、季節ごとに調度品を変えていたりしたものですが・・・私はそれらを“美術品”とは思っていませんでした」・・・それらは特別なものではなく、生活に身近なものであったことが伺えます。そう言った感覚を現代では「贅沢」と呼んだりしています。
プライスさんのコレクションは主に戦後まもない日本で収集されていったわけですが、身の回りのことでせいいっぱいの暮らしをしてきた時代の様子も伺え、手放した我々(日本人)のことを単に責めることはできないと感じました。また、江戸絵画はプライスさんに救われたのだと改めて思いました。
この「若冲と江戸絵画」の放送は来年1月1日再放送するようです。
プライス展は東京に続いて京都の展覧会を終えたところです。東京展のはじまった頃に出かけた者としてはなんだかもうすっかり過去の出来事になってしまいましたが、来年は九州、名古屋に巡回。
貴重だったのはこれまでに聞くことのなかった悦子夫人のお話です。
「50〜60年前は普通の家に床の間があって、季節ごとに調度品を変えていたりしたものですが・・・私はそれらを“美術品”とは思っていませんでした」・・・それらは特別なものではなく、生活に身近なものであったことが伺えます。そう言った感覚を現代では「贅沢」と呼んだりしています。
プライスさんのコレクションは主に戦後まもない日本で収集されていったわけですが、身の回りのことでせいいっぱいの暮らしをしてきた時代の様子も伺え、手放した我々(日本人)のことを単に責めることはできないと感じました。また、江戸絵画はプライスさんに救われたのだと改めて思いました。
この「若冲と江戸絵画」の放送は来年1月1日再放送するようです。
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by tsukinoha
| 2006-12-27 05:50
| シネマ&TV
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