027 全宇宙誌
杉浦康平氏(1932〜)は芸大の建築科を出られたのに、グラフィックデザイナーになった方です。何でも、1本の自分の引いた罫線が、印刷されて世にでるということのリアリティの衝撃で建築をやめた云々と、かつて私のデザインの師匠から聞かされていました。(多少の脚色はあったにせよ事実と思われる)その師匠も若い時分杉浦氏に影響を受け、時に仕事に参加されていた方でした。
師匠の影響をたっぷりと受けた、私のブックッデザインやエディトリアルの考え方の源泉を辿ると、杉浦さんに行き着くような気がします。杉浦さん独自の方法論は、建築を学ばれたからこそ編み出された思想ではないでしょうか。「造本設計」という単語も杉浦一派から出てきた言語です。
PCという便利な道具は1本の線もすべて無機質なものに変えてしまいました。誰がやっても同じ線。かろうじて私の世代だったら、息を殺して慎重に版下に線を引いていた経験があります。アイデアが生まれ、試行錯誤を経て着地点へ向かう最後のこだわりが版下制作に集約されます。そこに辿り着いたとき許される、ある種の至福の瞬間でもあるかのごとく、無の境地に近い緊張感。
罫1本にだって意味がある。だったら今後グラフィックデザインは何をどう向かい、実行するべきなのか。私にとって日々の、一生の、課題のようでもあります。
私のような者がこの書物について語ることなど大変恐れ多い気がいたしますが、とにかくすごい本なのでここに紹介させていただきます。宇宙観の再現を本で試みたと言われるブックコスモスと称された本書は、科学や文学の領域を超えた宇宙の本。384ページ、約190もの見開きは一定のフォーマットのもと、すべて違うレイアウト。スミ1色のみの究極の色使いは、デザインとはレイアウトありきであるということへの気迫があります。そして何よりも、一体となったデザイナーと編集者、写植オペレータ、印刷製版現場、本となって世に出るまでの様々の職人のチームワークの粋(すい)が感じられて圧巻。小口を右開きにすると星座図が、左開きにすると、アンドロメダ銀河の図柄が現れる懲りようです。1册の本はひとつの宇宙であることを体現した『全宇宙誌』は、私にとって読む本というよりは、眺めつくしてため息をつく本です。
『全宇宙誌』(B5版上製本/1979年・工作舎)1986年第五刷発行がされた頃に、当時の職場のスタッフ数名と購入した。20代前半の5000円の本はかなり高価だったが、値のつけられないような値打とはこのことか。
師匠の影響をたっぷりと受けた、私のブックッデザインやエディトリアルの考え方の源泉を辿ると、杉浦さんに行き着くような気がします。杉浦さん独自の方法論は、建築を学ばれたからこそ編み出された思想ではないでしょうか。「造本設計」という単語も杉浦一派から出てきた言語です。
PCという便利な道具は1本の線もすべて無機質なものに変えてしまいました。誰がやっても同じ線。かろうじて私の世代だったら、息を殺して慎重に版下に線を引いていた経験があります。アイデアが生まれ、試行錯誤を経て着地点へ向かう最後のこだわりが版下制作に集約されます。そこに辿り着いたとき許される、ある種の至福の瞬間でもあるかのごとく、無の境地に近い緊張感。
罫1本にだって意味がある。だったら今後グラフィックデザインは何をどう向かい、実行するべきなのか。私にとって日々の、一生の、課題のようでもあります。
私のような者がこの書物について語ることなど大変恐れ多い気がいたしますが、とにかくすごい本なのでここに紹介させていただきます。宇宙観の再現を本で試みたと言われるブックコスモスと称された本書は、科学や文学の領域を超えた宇宙の本。384ページ、約190もの見開きは一定のフォーマットのもと、すべて違うレイアウト。スミ1色のみの究極の色使いは、デザインとはレイアウトありきであるということへの気迫があります。そして何よりも、一体となったデザイナーと編集者、写植オペレータ、印刷製版現場、本となって世に出るまでの様々の職人のチームワークの粋(すい)が感じられて圧巻。小口を右開きにすると星座図が、左開きにすると、アンドロメダ銀河の図柄が現れる懲りようです。1册の本はひとつの宇宙であることを体現した『全宇宙誌』は、私にとって読む本というよりは、眺めつくしてため息をつく本です。
『全宇宙誌』(B5版上製本/1979年・工作舎)1986年第五刷発行がされた頃に、当時の職場のスタッフ数名と購入した。20代前半の5000円の本はかなり高価だったが、値のつけられないような値打とはこのことか。
by tsukinoha
| 2005-05-18 05:50
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