たまゆらデザイン日記

351 詩人の書

d0009581_21104551.jpg詩人の書
疋田正吉
二玄社
2006年





なぜ安定した書の基盤が崩れ、激変するに至ったか。維新によって書を育成する教育に変化が生じたからである。正しくは変わったのではなく、それまでの流れを塞き止めるにひとしい打撃をこうむったのである。〜中略〜書の実用離れの教育方針から変体かなの廃止に至る、一連の書の細胞の破壊だ。(本書218頁より)

絵画、陶芸、蒔絵さまざまな伝統文化のなかで、書の近寄り難さは別格のような気がしていました。善し悪しに至っては・・・?という方も多いのではないでしょうか。この遠い存在にさせる理由は何か。それはあまりにも単純な原因でした。
日本人が筆という日常の文具を捨ててしまったからです。筆記具が変わるということは、書体まで(書き方)変わってしまう(変えさせられる)という事です。
一度欠落してしまうと、もとの状態がわからなくなる。ちょうどそれは建物が壊されて更地になると、そこに何があったか、たちまちわからなくなるように。(本書216頁より)
「書く」というあまりに身近な行為ゆえに、一度失ったら戻らない感覚(単に手の感覚ということでなく)だということを思い知らされます。

「幕末の御家流の書を見てみよう。(略)上役人の制札から下商人農夫に至るまで仲なかよい字を書いてゐる。その差が非常に少ない。否、時として商家の字などに素敵に立派なのに出逢ふ。つまりならしにうまいというこの現象は、實に驚くべき事柄なのである。今の時代が到底實現し得ないことなのである。今から見ると夢のような事柄である(柳宗悦)」このような夢の時代が百年にも満たない、ついこの間のことだったことを、われわれはよく考えてみる必要がある。(本書227〜228頁より)

筆が西洋の筆記具にとって変わられた現象は、私の身近な例にたとえると、活版印刷が写真植字にそしてデジタルにとって変わってしまったことに類似しています。私が最後に版下で入稿原稿を作ったのは5年前。次世代へと引き継がれる必要なく、緊張の面持ちで引いていた線の1本、ピンセットで印画紙を貼付けていた手の感覚が忘れ去られていくのです。しかしこれは一般の生活者にまったく支障ないことです。

詩自体が訴えてくる言葉の精気のようなものと、書によって呼び覚まされるものとが一致した時に初めて、素晴らしい現代詩の書ができるんだ。(本書158頁より)
この一遍の言葉に感銘を受けつつ、今日もパソコンのキーを打っている自分がいます。


〈目次〉
詩人の書
詩の姿
対談 北村太郎×疋田正吉
詩魂の書 『断腸亭日乗』に見る荷風の書
近代芸術家の書 その異形の書の系譜

疋田正吉
大正12年生まれ。詩人・書道評論家
平成10年没。

友人(の装丁)から贈られた本です。
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by tsukinoha | 2007-06-14 21:18 |

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