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たまゆらデザイン日記

319 北風のわすれたハンカチ

319 北風のわすれたハンカチ_d0009581_1753797.jpg北風のわすれたハンカチ
安房直子
旺文社
1971年
(昨年ブッキングより復刻された)





私が小学校3年生の時、担任の若い女の先生が「北風のわすれたハンカチ」を朗読してくれたのが、はじめての安房直子さんの童話でした。以来、好んで安房直子さんのお話を手にしていましたが、最初に出会った「北風のわすれたハンカチ」を見かける機会がなくなって、そしていつのまにか“わすれて”しまいました。

子どもが生まれてしばらく経ってからでしょうか。子どもと一緒にいること自体、“わすれて”しまっていたものが、蘇るような感覚であることに日々おののきながら、急にこの物語のことを思い出します。もう一度読んでみたい気持ちにかられますが、図書館で検索してもどこにも在庫がなく、どうしても出てきません。しかし、私の念が強かったのか、どうか、一昨年ネットオークションで見つけて手に入れることができました。30年振りの再会です。昨年復刻版が出たので、もしかしたら図書館で見かけることができるかもしれません。

表題のお話のほか、「小さいやさしい右手」「赤いばらの橋」いずれも初期の作品。全体のほぼ半分以上の見開きに牧村慶子さんの挿し絵が入っていますが、カラーと2Cのページネイションに効果的に配置されており、ブックデザインとしてもよく考えられていると思います。

今、私が子どもに「北風のわすれたハンカチ」を朗読する番になりました。
子どもの頃に感じたすてきな感覚は、このお話のなかにちりばめられたことばの数々だったことに気がつきました。トランペットやマンドリンの音色、おいしそうなお菓子の焼ける匂い、むせかえるようなばらの香り・・・。
そして、大人になったからこそ感じられる物語の奥深さ。善意を裏切られて復讐心に燃える魔物と、パン屋のおかみさんになった昔の少女、ふたりの対話に胸がしめつけられる「小さいやさしい右手」。お互いの外見が嫌いだったはずの魔女の少女と鬼の少年が、ふとしたことで心を寄せあう「赤いばらの橋」。こんなすてきなお話もっと読まれるといいのにな・・・と思います。



by tsukinoha | 2007-03-06 17:11 |

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