255 花鳥 愛でる心、彩る技〈若冲を中心に〉第5期
展示の見どころは若冲と円山応挙・森徹山の孔雀図との対比。個人的に嬉しかったのは長崎派の柳沢其園の絵を見ることができたことです。
動植綵絵の展示は以下の順でした。
老松孔雀図
芙蓉双鶏図
薔薇小禽図
群魚図(鮹)
群魚図(鯛)
紅葉小禽図
さて・・・
僭越ながらではありますが、今回の展示を通して、若冲の絵から感じられる特徴を3つ上げてみたいと思います。
まずは、ベストショットを描く(「芙蓉双鶏図」)。
若冲はなんといっても鶏です。庭先に飼っていた鶏を観察しつくした目線で描く鶏は、狩野派のマニュアル的な花鳥(花鳥というテーマを辿るとお手本は中国)とは全く違うものです。絵を描くにあたってその光景のベストショットを描いている・・つまり絵を描く段で絵師自身がすでにトリミングしてしまっている、瞬間を捉えた絵です。どこでも切り取ることができる狩野派の花鳥画に比べて、若冲らの写生画と呼ばれる時代の絵になってくると非常にトリミングしずらい。それはそうと、この雄鶏のポーズはすごい(画像だとわかりずらいですが、両足のあいだから頭を尻に向けて出しています)。ほんとにこんな格好していたのでしょうね。
次に、想像の景色(「群魚図(鮹)」)。
ありえない光景を描いてしまうということ。これは当時としては画期的な思いつきだったのではないかと思います。天下太平の江戸時代、博物学が盛んになった下地や背景があったからこそ生まれた絵でしょう。当然というば当然ですが、魚はもとより、貝にしても、虫にしても若冲が実際にすべて見て描いたものではないと言われています。ここに、行ったことのない琉球を(模写して)描いた北斎と、共通するものを感じます。鮹の足先に子鮹がしがみついているのがなんともご愛嬌。洒落っ気のある若冲を想像してしまいます。
最後に、神は細部に宿る(「紅葉小禽図」)。
今回は娘を連れて行きましたが、今回のお気に入りがコレでした。レースのような羽の孔雀や、ももいろの薔薇よりも、紅葉がいいなんて、子どものくせに渋い奴です。もっとも紅葉が花のように見えたのかもしれません。
真っ赤なモミジが彩る景色にただ感動して一所懸命描いたのでしょうか。ともするとただの紅葉の景色がそうならないのは、ギリギリのところの枝ぶりのライン。際にこだわるあたりがひとつのポイント。そしてもうひとつは、ひとつひとつ丁寧に描かれた葉。手描きですから同じようで全部違う。よく知られた言葉の「樹を見て森を見ず」・・細部ばかり見て全体を見ない悪い例えは、若冲の絵を見ていると別の目線があるということがよくわかります。神は細部に宿る・・ひとつひとつが全体を輝かせるのです。もっともこの感覚は日本画全体の流れに言えることなのかもしれません。
さて、動植綵絵、いよいよ来年は相国寺に里帰りです。およそ117年振りですか。
廃仏毀釈の波から宮内庁に渡った動植綵絵一同が、若冲が寄進した相国寺に帰るのです。ほんとうに散り散りにならないで良かった。良かった・・と、思わず手を合わせたくなります。
京都のみなさんも、遠方のみなさんも、またとない機会です。是非お出かけくださいね。
そして行けない人の分も味わってくださいませね〜。
by tsukinoha
| 2006-09-06 21:28
| 展覧会
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
31 |
最新のトラックバック
以前の記事
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2012年 05月
2012年 03月
2012年 01月
2011年 09月
2011年 01月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2013年 09月
2013年 08月
2012年 05月
2012年 03月
2012年 01月
2011年 09月
2011年 01月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
お知らせ
記事と関連のないコメントやトラックバックは予告なく削除させていただく場合があります。予めご了承ください。