200 黄昏に背を向けて
黄昏に背を向けて
NSP
キャニオン・レコード
(1977年11月)
1あの夜と同じように
2 北北東の風
3 庭先に夕闇み
4 秋日(しゅうじつ)
5 星も見えない
6 砂浜
7 五月雨(さみだれ)
8 踊るダンスは君ひとり
9 朝
10 夕凪ぎの池
11 五丁目二番地
12 揺れるひととき
いつだって、衝撃をもたらす奴は静かで素朴だった(アルバムのキャッチフレーズ)
このアルバムで、NSPはそのトータル売り上げ枚数の実数が100万枚だという。〜中略〜一口にアルバム9枚、100万枚というが、これは並大抵のことではない。それは他のたくさんのグループを見ているぼくがもっとも良く知っていると思う(ライナーノーツよりby富沢誠一)
どれがいちばんNSPらしいアルバムか・・・と聞かれたらまずこの9枚目の『黄昏に背を向けて』を上げるのではないかと思う。それにしてもデビューして4年でアルバムが9枚、さらに100万枚の売り上げとは存在が地味だっただけに驚異的。ヒット曲「夕暮れ時はさびしそう」の男の子がオトナになっていくとこうなる・・といったような、どこかあか抜けない感じの不器用さが魅力。(前記事に関連づけると、武満さんは不器用さを徹底した音楽家などと言われた)黄昏の曲のイメージが強いNSP。黄昏に背を向けたがっているけれど、逃れられない・・そんなもどかしさまでを漂わせる。
アルバム100万枚突入の5万枚がカラーレコード。
というわけで、手元にある私のレコードは黄昏色。
五月雨の季節から晩秋のころまでを歌っている、NSPならではの季節感溢れるアルバム。音楽的なことから話がそれてしまうが、洗足池(大田区南千束)がモデルになっている「夕凪ぎの池」に個人的な思いをあてる。
自宅から自転車で15分ほどで行ける、我が家では花見などで馴染み深い洗足池。たまたま大森近郊に一人暮らしをするようになったときに、駅から洗足池行きのバスが通っていることに気づいたものの、実際に出かける機会が訪れたのは、数年を経てからだった。(ちなみに通常のアクセスはJR「五反田」または「蒲田」駅から東急池上線に乗り「洗足池」駅下車がおすすめ。目の前に中原街道と洗足池が見えます)
池にボート浮かべて二人きり話した
と、歌詞通りのことをした(相手は夫)といっても・・バスで熟睡後だったのでロマンチックな光景とは程遠かった・・。
今も昔も変わらないのは洗足池の辺りの松の枝
私としては、広重の名所江戸百景のうちのひとつに「千束の池」があることがはずせない。洗足池は沸き水を水源とする池で、臨終の近いことを悟った旅の途中の日蓮上人が、この池で足を洗って休息したという逸話からこの名がついた。もともとは近隣の地名にあるように千束池と書く。景色の右側にある松の木は、着ていた袈裟を脱いで掛けたという袈裟掛松で、今でも池のほとりの妙福寺境内の中にある。
そんなことを考えながら「夕凪ぎの池」を聴くと、暗示的な奥深さを備えたラブソングの歌詞に驚いてしまう。
余談になるが、文士村の時代のころまでは、洗足池付近まで「馬込」(筆者居住地)だった。
昭和初期のころまでは、のどかな田園風景がつづく田舎だったらしい。
by tsukinoha
| 2006-05-04 07:44
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