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たまゆらデザイン日記

110 デザイナー誕生

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デザイナー誕生
近世日本の意匠家たち
(1962年・美術出版社)
水野比呂志


『雁金屋草紙』を手にとった頃の事。
「デザイナーだったらこれを読まなきゃ駄目よ」と20歳年長の当時のマネージャーに言われて、渡された本です。
はからずもデザインということに足をつっこんだ自分が、日本に生まれ育ちながら、そのデザインの源泉を辿るということをまったくしていなかったことに気づかされ、あまりにも無知であったことにショックを受けたものでした。加えていうならば、デザインを勉強する場というのは、ただスキルを教えるのではなく、こういうこと(歴史や思想から創造というものを捉えること)を学ぶ場でなければ意味ないのではないかと憤りさえ感じたものです。日本にいながら日本の古美術という「観賞するもの」として切り離されてしまったような見方しかできないというのは、おかしなものです。

前記事をご覧いただいた方ならお気づきのように、表紙は尾形光琳の「紅白梅図」の流水。
クリネックスティシュー(Design by 故・田中一光)の意匠です。
以下、目次。

   アート・クリティク 能阿弥・紹鴎・利休——茶道美学とその実践
       スポンサー 町衆・納屋衆——町絵師と詫茶の擁護者
 インテリア・デザイナー 永徳——城館と濃絵
  クラフト・デザイナー 織部・乾山——器形と陶画
  アート・ディレクター 光悦——鷹ヶ峯工房の意図
    レイアウト・マン 宗達——扇屋俵屋の技術
     アイデア・マン 光琳——流行感覚と意匠
テキスタイル・デザイナー 友禅——染物模様と絵画
    イラストレイター 師宣・政信・春信——浮世絵の発生と完成
    フォトグラファー 北斎・広重——風景と風景画
 デザイナーなきデザイン 民芸——非個性美の世界と現代

単なる美術論ではなく、日本のデザインという視点で整理された本書は、芸能の創設期である室町時代の能阿弥を基軸としたもの。もちろんそれぞれをより掘り下げていくと本書の視点だけでは網羅されない部分がありますが、こうして俯瞰して見る事のできる入門書としては格好の一冊です。



by tsukinoha | 2005-10-22 07:06 |

日々のよろずデザイン観
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