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たまゆらデザイン日記

047 ジャーマンアイリスのゴッホ

アイリス。その名は古代ギリシアの虹の女神イリスにちなむと言われています。
アイリスそのものは西欧アヤメの園芸品種の呼称で、庭園用のジャーマンアイリス、切り花用のダッチアイリスのグループに分けられるそうです。

光琳の『燕子花図屏風』から連想するのは、晩年ゴッホが精神を患い、病院の庭咲に咲いていたものを描いたというジャーマンアイリス(『Irises』1889年/ポール・ゲッティ美術館)*。印象派は、ヨーロッパ絵画史上の革命でした。宗教画が主流だった印象派以前のヨーロッパ絵画で、野に咲く花の姿そのものを表現するという絵は…おそらく存在しません。大地に咲く花も花瓶の花も描かれた主題の隠喩であることが普通であり当然でした。アイリスといえばマリアを象徴する花のひとつでもあります。

印象という名は、平面的で立体感のない日本の画に対しての視覚的な印象、精神を写す東洋的な視点の風景画への感傷的な印象という捉え方もできるのではないかと思います。屏風や襖に外の自然を持ちこんでいた日本人。キャンバスを外へと開放した西欧。そこには出会うべくしての出会いがあったとも言えましょう。

さて、この庭に咲くジャーマンアイリスを描いたゴッホは、北斎や広重へのあこがれはあったものの、光琳を知っていたかどうかはわかりません。しかし、あこがれの延長線にいた光琳の“隔世遺伝”がゴッホに起こったとしても不思議はなさそうです。光琳もゴッホも心象風景を描いたことには変わりないのですから。

*アイリスを描いたものでは、他に『アルルの近郊の花咲く野原』ファン・ゴッホ美術館1888年があります。



by tsukinoha | 2005-07-02 06:08 | 芸術全般

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