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たまゆらデザイン日記

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333 『三人暮らし』を読んで

d0009581_6294744.jpg三人暮らし
五十嵐正人
水曜社
2007年



1000人の障害者を支えてきた個人福祉「お泊まりの家」の物語
(カバーオビより)

1回読み終えてまた再び頁をめくっているところです。
心の深いところまで浸透してしまったものごとへの感想というのはとても難しいものです。言葉にしたとたんに宙に浮いてしまうような・・・しかし作者の秘められた熱情を感じずにはいられませんでした。従来の福祉制度(施設)に受け入れてもらえないような障害のある方々がたくさんいることにショックを受けています。そんな実情を知らない自分にもショックを受けています。本書は制度とは無関係の「お泊まりの家」という個人福祉サービスを運営されている作者の実体験を小説というかたちで綴られたものです。


本書に記された実年代を遡りつつ私も自分の過去・現在を振り返っていました。
「デザインという仕事を通しての福祉」をと、心に決めたのは1992年のこと。しかし日々を過ごして心揺らぐことばかり。そんな自分でも子を授かり、子どもを通しての福祉を考え、現在はからずも仕事の製作内容そのものが福祉に近いもの(主に高齢者)をしているわけですが、そうなればなるほど、いったい福祉とは何なのだろうという疑問が大きくなるばかりです。もちろん製作物を通して、依頼された方や、お会いすることのない受けとった方々へ、少しでも役に立つことであれば、それがいちばんの喜びであるはずなのですが、そんなことを思う自分が大変おこがましい。


私がブログをはじめた時期は桜の季節だったのですが・・・『桜の文学史』を通して作者の五十嵐さんを知りました。『桜の文学史』の著者・小川和佑氏が恩師であると今回はじめて知り、また改めて驚いています。私が桜の歴史に興味を持ったきっかけはかつての師匠が桜狂いだったことからでしたから・・・そんなことを思い出しながら。


最後に。肝心の本の感想がうまく表現できずにいることを申し訳なく思います。でも最後、温かな気持ちで本を閉じることができてほんとうによかったと思います。
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by tsukinoha | 2007-04-28 06:31 |

332 ラ・フォル・ジュネ「熱狂の日」音楽祭2007

毎年これといった予定もないまま子どもとずるずる一緒(夫はいつもカレンダーと関係ないので)のゴールデンウィークですが・・・思い立ってクラシックのコンサートに行くべくチケットをとったところです。
これが一流の演奏が大人2,000円、子ども1,700円(A席)と破格の値段。
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ラ・フォル・ジュネ「熱狂の日」音楽祭2007クラシックのお祭り。東京・有楽町の国際フォーラムで開催されます。

ラ・フォル・ジュネ(熱狂の日)は1995年、フランスの港町ナントで誕生。国外からも注目を集め、2000年リスボン、2002年スペインのビルバオ、そして2005年に東京に上陸。クラシックを多くの人に楽しんでもらうために、アーティストのレベルを絶対に下げずに、格安で、ということが主旨。

初年のベートーヴェン、昨年のモーツァルトに続き今年のテーマは民族のハーモニー。
数日前に思い立ったので、人気のチケット(ガーシュウィンやラフマニノフなどのピアノ協奏曲や小ホールの室内楽など)はすでに完売。最終日のフォーレのレクイエム作品48を聴きにいくことにしました。フォーレはフランス近代音楽の礎を築いた一人で、エレガントでデリカシー溢れる音の世界が魅力。組曲「ペレアスとメリザンド」の中の「シシリエンヌ」の美しいメロディが大好きです。
期間中相当混雑が予想されますが・・・無料コンサート(要有料チケット)のルーマニアのジプシー音楽などはぜひ聴いてみたいと思います。
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by tsukinoha | 2007-04-27 17:26 | 音楽

331 江戸幕末滞在記 若き海軍士官の見た日本

d0009581_6131888.jpg江戸幕末滞在記
若き海軍士官の見た日本
エドゥアルドスエンソン・著
長島要一・翻訳
講談社学術文庫
2003年


旺盛な好奇心、鋭い観察眼
王政復古直前の日本を描く
(カバーオビより)

1866〜67年、フランス公使ロッシュ付添武官、24歳のデンマーク人でフランス海軍のエドゥアルドスエンソンが綴った貴重な日本での見聞録。ありのままに書かれた当時の日本の様子は、生活、文化、自然、宗教と多岐にわたり、慶喜への謁見(顔立ちも整って美しく(中略)中背以下であったが堂々とした体格で、声が優しく快かった。まさに非のうちどころのない国王、という印象であった)の様子なども大変に興味深く、全編通してとても新鮮な驚きをもたらせてくれます。


〈以下本書より抜粋〉
●一見したところ日本人は、好ましい外観をしているとはとても思えない。狭い額、突き出た頬骨、ぺしゃんこの鼻、おかしな位置についている両の目は、いやな印象を与えかねない。ところがそれも、栗色の輝く瞳から伝わってくる知性、顔の表情全体からにじみ出てくる善良さと陽気さに接して思わず抱いてしまう共感によって、たちまちのうちに吹き飛ばされてしまうのである。
●下層の労働階級の男はがっしりと逞しい体格、上流階級の男はやせていて往々にして貧弱。
●日本の上層階級は下層の人々をたいへん大事に扱う。
●学習教育は非常に高い水準にあり、ほとんどみな読み書きができるが、日本語を完全に使いこなせる者はごく少数に限られる。下層の人間が話す日本語は上流の人々が使うのとまったく異なっている。
●悪習らしい悪習はふたつ。すぐに酒に手を出すこと、あまりに女好きなこと。
●日本女性は新鮮で色白、紅みを帯びた肌、豊かで黒い髪、愁いを含んだ黒い瞳と生き生きとした顔は、もう美人のそれである。(愛情過欲な日本人の男の気持ちがわかる。とある)
●日本人は多産な民族である。そこいらじゅう子どもだらけで、その生き生きとした顔、ふっくらした身体、活発で陽気なところを見れば、健康で幸せに育っているのがすぐにわかる。
●種類が多く豊かに群生している植物のおかげで日本は世界でいちばん美しい国のひとつになっている。
●日本人は狂信的な自然崇拝者である。ごく普通の労働者でさえ、お茶を満喫しながら同時に美しい景色も堪能する。庭づくりの好みにもうかがい知ることである。どの家にもたいてい小さな庭があり、部屋ひとつ分の大きさしかないのが普通だが、住人が丹念に手入れをしている。本物の庭が持てないときには、木箱に小さなミニ庭園を作る。


日本人でありながら、すでに私(たち)が、外国人のスエンソンのような視線で150年前の日本人を見てしまっていることに気がつきませんか?
機会があったら是非一読をおすすめします。
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by tsukinoha | 2007-04-22 06:17 |

330 福田平八郎を語る数学者

「新日曜美術館」の今月は「この人が語る私の愛する画家」と題し各界の著名人に贔屓の画家を語ってもらうという企画のシリーズです。
1回目の4月8日、福田平八郎(日本画家/1892〜1974)を語る数学者・藤原正彦氏の語りがとても印象に残りましたので、記録(箇条書き)しておきたいと思います。〈〉は福田平八郎作の画題名


大学時代、ガールフレンドに付き合って美術館などをめぐるうちに絵を(鑑賞するのが)好きになった。(ご自身は美術の成績は全然ダメだったと言う)
加えて大先輩の数学者・岡潔氏の影響が大きい。曰く、数学の発見は2通りある。
  欧米型・・・インスピレーション
  日本型・・・情緒性
日本の情緒(俳句、日本画など)を知るべし。書店で求めたいくつかの日本画の書籍の中で福田平八郎に出会う。
〈新雪〉は、自然の一部をトリミングしたような不思議な構図。福田平八郎の画は、一部を見せて全体を知る、一部から全体を想像すること・・という数学の定理と同じ。
高校生の時発見したこと。俳句と和歌の違い。
  俳句=絵=自然を切り取る
  和歌=音楽=心を歌い上げる
〈漣〉〈筍〉漣の連続、葉をいっさいかかない竹の絵は、対象をじっくりと見つめないとできない。
日本における学芸はまず文学が圧倒的で次いで数学。と岡潔氏は言っていた。
俳句におけるイマジネーションはオリジナリティ、クリエイティブへとつながる。日本画も同じ。この思索は数学における考えと同じ。抽象と写実の中間ぐらい。数学の考え方も国に個性があって、フランスでは抽象、イギリスや日本では具体性を根に置いた抽象をする。

〈雨〉瓦の雨粒の様子は今落ちて黒ずんでいるもの、すでに乾いて白くなってきたもの・・・と、時間を絵に表わしている。
一部と全体、一瞬と永遠。奥ゆかしく、主張しない。
日本においては古来人間は自然の一部で、一体だった。自然征服で幸福を求めた欧米と異なったところ。身の周りのもの。画題にしても。

現代はグローバリズムと言って効率や能率ばかりを求める。それはいいことかもしれないが、例えば明日から世界中が英語だけを強制するようになって、30年後は英語しか話す必要がなくなる。外国語を勉強する人はいなくなる。便利。しかしそんな地球なら爆発してなくなってしまえばいい。チューリップの花はきれいだけれど世界中の花がチューリップだけになってしまう・・・そんな地球なら爆発してなくなってしまえばいい。
各国、各地方で育まれた文化であるから素晴らしい。言語、方言までも含めて。
何がグローバリズムだ。もっと大事なものがある。
図画工作の時間をもっと大事にして欲しい。日本画なども取り入れたらいいんじゃないか。感受性を育んで欲しい。

藤原正彦氏の語り、視線は、一部を語りつつ全体を指摘する、そのものでした。
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by tsukinoha | 2007-04-18 22:40 | シネマ&TV

329 紙とコンピュータと音楽

今年の竹尾ペーパーショウは十数年続いた表参道・スパイラルから、東京・丸ビルへと移動しての開催でした。今回特に全体のアートディレクションはなく、26種類のファインペーパーを素材にクリエイターが実際に使用できる製作物で表現するという展示内容。結構混雑していたので、そういった“作品”は適当に見て、新製品のコーナーで多少説明を聞きつつ駆け足で会場を去ることに。合間の時間だったので慌ただしく過ごしてしまいました。コンピュータがいくら普及しようとも紙がなくなることはないと思いますが、実際値の張るファインペーパーを使用できる仕事はパッケージやブックカバーを中心とした一部。雑誌やチラシ・ポスターなどはランク下の塗工紙というのが通常ですから・・・。


昨夜は久し振りにApple Storeに行きました。家族総出で。幾度か足を運んだ銀座店に比べ渋谷店はこじんまりとした感じ。
サポートはとっくに終了しているにもかかわらず、DTPの世界ではPower Mac G4(特にMirrored Drive Doorsという最終モデル)が人気。クラシック環境なしにOS9.2.2が起動できるということに加えOSxに切り替えできるということに価値が置かれています。同機種を使用の私自身ももっぱら9.2.2での稼動でIllustratorのバージョンは8をメインに使用。印刷の現場で推賞されているということが大きく影響。個人にしても企業にしても、莫大な投資をして整えた環境をすべて総入れ替えなんて容易くできることではありません。それにまだまだ使用できるのにもったいないじゃないですか〜。雑誌や広告でいくら最新は素晴らしいと謳っていても現場はシビアなのです。もっともOS9.2.2とOSxを併用しているところが多いようですが。
現時点での大きな難を言えば、OS9.2においてはIE.5xのバージョンのみの対応であること。つまり・・・最新バージョンに対応しているホームページなどは閲覧できないという現象が起ることです。もちろんHP製作には不適当で、このままだとブログにしても出来なくなる日が・・・なんてこともなきにしもあらず。
一方でIntelMacの登場で今までのOSXでのクラシック機能が使用できなくなるということが、今後DTP業界でどのような影響が起るかに注目です。


さて、Apple Storeへ出かけたのは、最新のMac Proの触り心地を試すため・・・もありましたが、当日知人のライヴを観るというもうひとつの目的が。(どっちがほんとの目的だか^^)

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ブラジル音楽とジャズ/フュージョンをミックスしたような音が特徴の「Trans of Life」というバンド。当日はSHIBUYA-FM公開収録を兼ねたライヴ。1994年より活動。メンバーも音楽性も昔と変わりましたが、過去私のお腹の中でライヴを聴いていた娘も共に8年振りに鑑賞。
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by tsukinoha | 2007-04-15 07:41 | デザイン

328 音楽の森へ

聴きたかった音楽まとめ借り・・・図書館で6枚(貸し出し限度)のCDを借りました。先週末のこと。今回はクラシックオンリー。レビューというより余談ばかりの記録です。

d0009581_5384332.jpg●モーツァルト2台と4手のためのピアノソナタ
ニ長調K.448(375a)/ハ長調K.521/ヘ長調K.497
エリック・ル・サージュ(ピアノ)フランク・ブラレイ(ピアノ)

小学生のときはじめて読んだ伝記がモーツァルト。理由は単純。オジサン顔の表紙が並ぶ伝記物の中、いちばん若くて(そりゃ〜短命だから)カッコイイと思って選択したのだ。10数年後、映画「アマデウス」によって、カッコイイイメージがガタガタと崩れ落ちたのは言うまでもなく・・・。
演奏者のル・サージュとブラレイはフランスを代表する60年代生まれの若手ピアニスト。朝一にこのCDかけていたら「せかされるようだからやめてくれ」とダンナに言われ・・・朝目覚めの時と就寝時には不向きです(笑)。早弾きですから。ニ長調 K.448(375a)第一楽章は「のだめカンタービレ」の作中、のだめと千秋が最初に連弾するピアノソナタ。

●ヴェートーベン ヴァイオリン・ソナタ
第5番「春」/ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」
ヘンリック・シェリング(ヴァイオリン)イングリット・ヘブラー(ピアノ)

「春」「クロイツェル」どちらもヴァイオリン・ソナタの定番。第9番「クロイツェル」は友人であるバイオリン奏者クロイツェルに献呈した曲。クロイツェルつながりの余談を・・・ピアニストであり指揮者であったレオニード・クロイツァー(1884年サンプト・ペテルブルク生まれ〜1953年没のドイツ系ユダヤ人/妻は日本人)の了承を得て名付けられた「クロイツェル」という国産ピアノメーカーは量産しないピアノ作りに徹底している。家の中古の「クロイツェル」は素敵な音色で私の下手なピアノもやさしくフォロー。「のだめカンタービレ」にも出てくる第5番「春」は“お花畑”を連想するには十分なきらきらした曲だが、ヴェートーベン本人がつけた名ではなく後年、愛称として呼ばれるようになったそう。

●小山実稚恵 アンコール
テレビ番組で観た小山実稚恵さんの「ラ・カンパネラ」。鍵盤の上をすべるように走る手技の超絶技巧。なのに優雅な演奏。すごい・・・。1982年チャイコフスキー・コンクール第3位、1985年ショパン・コンクール第4位と二大国際コンクールに初めて入賞した日本人。ショパン「ノクターン第2番」リスト「愛の夢第3番」など名曲のいいとこどりベスト盤風な1枚。

●シューマン ピアノ協奏曲イ短調作品54/グリーグ ピアノ協奏曲イ短調作品16
クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)/ベルリンフィルハーモニー管弦楽団/指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

グリーグのピアノ協奏曲は子どもの頃TVの「名曲アルバム」で幾度となく聴く機会が。北欧の自然の映像とともに流れる音楽が好きで、はるか北の地に憧れを抱く・・・。なんか久し振りに聴いて・・・宇宙戦艦ヤマト完結編の「シンフォニー オブ アクエリアス」(by羽田健太郎)を思い出すようなメロディラインだと思った(逆だって)。

●禁じられた遊び/ギター名曲集
ペペ・ロメロ(ギター)

ピアノはもちろん好きですがギターの音色も大好きだ〜。「アルハンブラの思い出」や「アランフェス協奏曲」スペインが好きな理由はギター曲が好きだからというのもあるかも・・・。スペイン出身のペペ・ロメオは「世界一のギタリスト」という呼び声も高い。しかしギターの音色というのはどうして郷愁を誘うのでしょうか。

d0009581_5381616.jpg●武満徹 ノヴェンバ−・ステップス
指揮:小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ

ちゃんと通しで聴いたことがなかったので。
11の段(段=日本の伝統音楽のひとつのまとまった単位=ステップス)から出来ていることと、初演が11月だったのとで、「ノヴェンバ−・ステップス」と名付けられたと言われる。1967年、ニューヨークフィルのリハーサル、尺八と琵琶が音を出すとクスクスと笑い声・・・当時の屈辱感を懐かしむように噛み締める尺八奏者の横山さんの話が聞けたのは先月の「知るを楽しむ」で。同番組のVTRで、武満さんの声が田村正和!?だという発見をした。ついでにジャケットの武満さんは宇宙人みたい。
それはおいといて・・・聴き慣れた西洋音楽(ここではクラシック音楽)を耳にした後、「ノヴェンバ−・ステップス」を聴くと衝撃的。水のようなオケの波を分け入るように尺八と琵琶の風が吹き抜ける。音を構築してハーモニーを作るのではない、音はもともと深遠にあってそれを取り出している・・・と常々語っていた武満さんの言葉がよく実感できる楽曲。すごい方だったんだなと改めて実感。
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by tsukinoha | 2007-04-14 05:59 | 音楽

327 樋口清之 日本人の歴史

d0009581_636110.jpg日本人の歴史
第四巻 性と日本人
樋口清之
1980年
講談社




第一巻  自然と日本人   第七巻  旅と日本人
第二巻  食物と日本人   第八巻  遊びと日本人
第三巻  お金と日本人   第九巻  笑いと日本人
第四巻  性と日本人    第十巻  夢と日本人
第五巻  医学と日本人   第十一巻 禁忌と日本人
第六巻  装いと日本人   第十二巻 悪と日本人

           

以前、品川の図書館で1巻ずつ借りて読んだのですが・・・残念ながら細かい内容は忘れてしまっています。上記画像の4巻目は図書館で検索して唯一出てこなかった一冊で、昨年銀座の古本屋で見つけて手に入れたもの。ブックデザインは杉浦康平氏。今のところ文庫化の気配がないのが残念。


信仰に裏づけされていた日本人の本来の性意識が、自由(現代の価値観から見ると)を謳歌した王朝時代を経て、中世から江戸時代までの封建下で歪曲されていった(仏教の衆道から起った男色というのもある)かなどを歴史を追って見ています。神事においての“性と笑い”が後に能や狂言へと引き継がれたり、民謡はエロティックな労働歌であったりというたくさんの新鮮な驚きがありました。経糸(時間)、緯糸(事物)の歴史の軸を透かして見れば、見えないものが見えてくる・・・そんな感覚のシリーズ本の一冊。

みうらじゅん『正しい保健体育』で現代のセンスに触れ、宮本常一『忘れられた日本人』で昭和初期頃までの男女の性のあり方を伺い知り、そして今回、本書でそれらの源流を遡るということをしたような気分になりました。なかでも目を引いたのは、我が国最古の医学書『医心方』(全三十巻/九世紀初頭)の記述です。その中の「房内」と名づけられた第二十八巻は千年も前に正確で科学的な性医学書として完成していると指摘されています。

『医心方』は、陰陽の和合が宇宙の原理だという東洋哲学(自然哲学)に貫かれており、陰陽としての天地、男と女があると考えられている。(中略)男女は完全な合意のもとに、完全に同じ気持ちをもつようになったときに、初めて完全な合一をができるのだということである。性をものと考えたり、弄ぶことを禁ずる思想を自然哲学の裏づけをもって説いているのである。(本文より抜粋)

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by tsukinoha | 2007-04-08 06:48 |

326 志野と織部 風流なるうつわ

小さい子は砂場で遊ぶのが大好きです。
とにかく黙々とひたすらに砂を掘ったりまるめてだんごにしたり。
土というのは生命の源につながるなにかがつまっているんじゃないかという気がしてきます。
子どもはなるべく土に近い階層に住まうのがいいとも思います。

娘が小学生になってから一緒に砂場に行く機会はめっきりなくなってしまいましたが、保育園時代はよく砂遊びに付き合わされました。まったりとした時間の中、手捻りの茶碗のことをよく思い出しました。
ろくろを使わず手捻りで作る美濃焼(織部や志野、黄瀬戸などを総称して呼ぶ。戦火を逃れた陶工たちが美濃の地域へ入り多くの工房ができたと言われる)の茶碗。丸い土の固まりを手で茶碗のかたちにしていく・・・トポロジー的でもあります。友人に誘われ年に2、3度参加した陶芸講座。最後に通ったのは今から8年前。30代は私たちくらいなもので、殆どは子育てが一段落したような年代の女性の方々。「赤ちゃんがいるのね。それじゃしばらく来られないわね」エプロンで隠したつもりでしたが・・・。名残惜しい気持ちになったのが昨日のことのように思い出されます。

「ゆがみの美」とも呼ばれている織部。
土をうつわのかたちにする過程で、最初からゆがんだものを作ることはできません。陶芸の講座の先生が手本でかたちが整った土の茶碗をぐにゃりと歪ませました。作為がないのが「ゆがみの美」であるとふうに見てとれます。千利休が大成させた茶を継承しつつ、大胆かつ自由な気風を好み、茶器製作に携わった武将で茶人の古田織部。均整の整ったうつわの歴史が桃山時代日本独自の審美に変貌した・・・という事実に興味はつきません。

ものを見る目が養われていないことをはっきりと自覚した20代、工芸とはまったくの無縁で育った環境を少なからず恨めしく感じていました。そんな愚痴を工芸のまち金沢で生れ育った同僚が黙って聞いてくれました。「悔しい」だけが先立っているうちは愛情は生まれて来ない・・・そんなことを思いつつ、未だ煩悩にまみれて進歩のない自分。

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いろいろなことを頭によぎらせながら、出光美術館で開催中の「志野と織部 風流(ふりゅう)なるうつわ」を見てきました。ふっくらとした志野の白、美しい鼠志野、斬新な黒織部。なかでも織部の緑の色は独特です。大陸から渡ってきた三彩などの緑とは全く違う。苔むしたような地味な鈍い緑。そんなうつわに惹かれてからどのくらい経ったでしょうか。


「出来上がった茶碗は眺めるだけでなく是非使ってみてください」と言われていたのを思い出しました。しまったままの自作の織部や志野の茶碗・・・。そばにあるものを愛でること。それはうつわ本来の目的なのかもしれません。いえ、遠い昔、神にささげたであろううつわというものが、用の美と呼ばれるまでに幾年の月日を越えてきたのか。
美術館をひと巡りした後、皇居方面を見渡す夕焼けが、しばしの余韻のひとときを包み込んでくれました。
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by tsukinoha | 2007-04-03 21:53 | 展覧会

日々のよろずデザイン観
by tsukinoha
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