たまゆらデザイン日記

カテゴリ:随想( 105 )




032 色あせた風景の中で

一昨日東武東上線の沿線の某地へ出かけました。
1年半ほど前からその地域に関わる、ある販促物に携わってきたのですが、他のスタッフに同行する機会に恵まれて、やっと現地を訪れることができたのです。
大手企業の社宅・グラウンド跡地に誕生した住宅地は、世代交流を含めたコミュニティの場を目指した街づくりとして誕生しました。既に生活がはじまっているマンションや個建ての周辺に、保育園や老人ホームなどが立ち並ぶ予定です。まだ若い街ながら感じられる落ち着きと癒しの雰囲気は、元々あった樹木がそこかしこに活かされていることの影響が大きいように思いました。近くの川越街道沿いの大きないちょう並木も印象的でした。
そして私が思い出すのは、かつて10数年間通っていた渋谷区の代官山地域。跡形もなく消えた木々に被われた同潤会アパートの光景と、昔の面影をすっかり無くした今の代官山とが、頭のなかで交錯しました。
開発というのは何故そこまでやらなければいけないのだろうか。
そんなことを思うのは、個人的な甘い感傷に過ぎないのだろうか。

手持ちぶさたな一人の帰り道、バックのなかの文庫を取り出しました。近所の古書店で100円だったドナルド・キーン氏のエッセイは、昭和30年代に執筆されたもの。その一遍「紅毛奥の細道」で、いつのまにか私は「奥の細道」に迷いこんでしまっていたようでした。
途中「和光市」駅で有楽町線に乗り換えをして銀座方面へ。あとは乗り換えを気にせずに没頭していられるはず…と、「終点です。」車内のアナウンスに我に帰りました。一瞬のタイムスリップ。
行き先を確かめもしないで乗り込んだ電車が到着した先は、有楽町線の池袋駅を通過する路線ではありませんでした。慌てて改札を出て有楽町線のホームへと足早に向かいます。
はじめて訪れた今日の場所、思い出の代官山、かつて訪れたこののある日光、松島、平泉、象潟…さまざまの風景が頭のなかに現れては消えてゆきました。

「色あせた風景の中で」…NSPの歌にあるタイトルから借りました。
アルバムの中の一作品ながら心に残る詩。風景というとこの歌を思い出してしまいます。地味〜です。
読んでいた本は『碧い目の太郎冠者』(中公文庫)。こちらも地味〜です。

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by tsukinoha | 2005-05-29 05:35 | 随想

017 大はしあたけの夕立

前日(25日)4月の千秋楽を終えて、歌舞伎座の通用口からは横付けされた大型トラックに、

大道具の背景画が詰め込まれていました。

普段デスクワークの多い私が珍しく外出。“おつかい”もたまにはいいものです。

八丁堀の方まで届けものをした後、銀座中央通りの伊東屋(文具・画材の大型店)へ行く…

裏道を散策しながら、忙しさのさなかの息ぬきのはずでしたが、

突然の激しい雨に見舞われました。

ビル伝いになんとか移動しつつもずぶ濡れ。

こんなとき広重の『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』を思い出すのは、

きっと自分くらいだろうと思いつつ、待っても止みそうにない雨に、
d0009581_5314863.jpg
伊東屋オリジナルの赤い傘を買いました。

広重のこの絵はゴッホが模写をしていますが、

浮世絵はジャポニスム(西洋の日本趣味)として

印象派の画家たちに影響を与えました。

おまけの画像は、あるときのある雑誌の特集ページの扉。
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by tsukinoha | 2005-04-27 05:42 | 随想

013 絵本に描かれた桜

d0009581_2130930.jpg


本を開いた瞬間の美しさに、胸を打たれました。
作者の心づくしを感じさせます。
安房直子(あわ なおこ)さんの『うさぎのくれたバレエシューズ』。
上記の絵はその本の見返し部分です。
蒔絵やきものに施された桜の意匠が、現代に蘇ったような画に
惚れ惚れと見とれていました。

この本は少し前に、娘(5歳)が喜びそうだな、と思って
ネットオークションで手に入れたものでした。
安房さんの物語には、子供時代には子供の、大人になってからは大人の、
それぞれの楽しみ方ができる世界があります。
実は小学生のときからひっそりとファンでした。
その安房さんの、読んだ事のないお話という理由で入手したのですが、
思いがけず絵が素晴らしかった。
南塚直子(みなみづか なおこ)さんの銅版画が勝っているとも劣らず。
桜の絵が美しいのです…。
絵を見ているだけで物語が浮かび上がります。
日本における絵本の原点は絵巻物語なんだろうな、と思いを馳せます。
個の表現ではなく、物語へ託された思いの表現。アーティストというようりは職人。
そんなマインドを受け継いでいるものが、現代にも存在しているのだ、と、
この本に出会ってふと感じました。

細々ともう少し桜の話は続きます。
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by tsukinoha | 2005-04-21 21:32 | 随想

009 弥生つめたい風

4月なのに…ですが、昨日はつめたい雨でした。
「弥生つめたい風」とは、桜の花が舞い散る頃に思い出す歌のタイトルです。
サビの部分の歌詞は
1番が、弥生
2番は、卯月
3番は、五月(皐月)
と、まるで桜前線のようですが、別れの景色を、舞い散る桜に例えたラブソングは、『万葉集』か『古今和歌集』にも通ずるような現代の恋歌かもしれません。
桜は、現代もきっとこれからも、私たちの心を写すような存在の花には変りないのでしょうか。

以前ゴールデンウィークを利用して、東北の親戚めぐりをしたことがありましたが、秋田の千秋公園の桜がちょうど満開の時期で、東京、東北と、一年で2度も桜の季節を楽しむことができました。
北国ではこれからが桜の季節です。

ところで、この「弥生つめたい風」という曲は知る人ぞ知る、1977年のNSPのヒット曲。
80年代の終わりに自然消滅したと思われた彼等が、今年なんと19年振りのオリジナル作品が出て復活していたのを知ったのは最近のこと。
多感な?中学時代にこの曲と出会い、月の呼び名(睦月、如月…)もこの頃憶えたような。季節もののラブソングの多いNSPは、東北は岩手出身の3人編成のフォーク(ニューミュージック)グループでした。
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by tsukinoha | 2005-04-12 05:34 | 随想

004 20年前の新人

新入社員の入社式や研修などの報告が続々と入って、4月というのを実感していますが、身近なビッグニュースといえば、連携組織を含めた大改革のなかで、関連企業に30代前半の若き社長が誕生したことでしょうか。新社長とそれを支えるベテラン役員の様子の熱気までもが、通信の発達のお陰でリアルタイムで感じることができます。
この臨場感、製作事務所にいるころには、当然想像つかなかったものであります。一般社会の有り様の一端を見せてもらっているようで、過去に「デザインはパブリックなものだ」と豪語していた自分が、若かったなぁと、恥ずかしくもなります。

私の新人時代はというと、改まった式もなく、即実践でした。
おつかいごとはもちろん、1日中暗室にこもって、先輩たちから頼まれた紙焼きをもくもくとやり、写植指定をおぼえ、見よう見まねで版下を作り、頭を混乱させながら色指定をし…。
技術というものの一切は、すべて真似をして覚えるもので、先輩の横で技術は盗むものでした。

この20年で現場のあり方は大きく変化していきました。
今やPCさえ持っていれば誰でもデザイナーになることができるのです。しかし、モノを作る上で大事なのは、PCの操作が出来ることだけではありません。キーボードやマウスは、ひと昔前の三角定規やピンセット、カッターなのです。道具を使いこなすことは必要ですが、デザインを考えるのは人間自身です。
ああそれなのに、今の私はいわば社内フリーランス状態で…つまり、デザイナーは私一人で…伝えるべき後輩が側にいないことに、一抹の寂しさと、危機感さえを感じてしまうのです。
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by tsukinoha | 2005-04-04 22:46 | 随想

日々のよろずデザイン観
by tsukinoha
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