たまゆらデザイン日記

039 魅惑の浮世絵

北斎と広重、大家二人を続けて観るというはじめての機会に恵まれた今回でしたが、展覧会のみで比較をしようというのはやはり難しい。これは、今回に限ったことではないのですが、会場の人の混み様も影響するということは言うまでもなく、ディスプレイによって感じ方も随分と変わってしまいます。『富嶽三十六景』展の龍子記念館の方は設けてあった柵に距離ありすぎて、浮世絵の魅力を味わうには物足りなさを感じました。一方でそうは言っても藍刷りの富士山の眺めは美しかった。館の一角には、龍子が使用していたと思われる絵の道具と顔料が並べて展示されていましたが、青色の顔料の種類の多さに、過去も現代も日本人の藍色好のみが受け継がれている一端を見たような思いがしました。
太田記念美術館は浮世絵専門の美術館ということもあって、ガラス越しではありますが、間近で絵を観る配慮がされています。夜の景色はねずみ色と漆黒のモノトーンの微妙な階調の違いがわかりますし、雪の風景では白い点に混じって空押し(模様の型を押したもの)で雪を表現していたり…細部に贅を尽していることは、浮世絵が本来は額縁に飾って見るものではなく、よくよく近づいて、手にとって観賞するものだということがわかります。展示のそばに浮世絵の仕上がるまでの図解がありましたが、印刷は何版にも分けて色刷りされているのですが、版木をしっかり和紙に定着させながらの印刷が数百年たった今でも、いえ今では表現できないような印圧の深みが感じとられます。「版下」「見当」など今でも印刷物の用語として残されているものに愛着を感じつつ、日頃オフセット印刷やカラープリンターで量産されるような自分の仕事が本当にうらめしくなります。
さて、浮世絵というのは、行灯(あんどん)のあかりのもとで親しんだと聞いたことがあります。そのあたりのことが『大江戸生活体験事情』(講談社文庫)にも詳しいのですが、実際の江戸時代の行灯のあかりは、今の60Wの電球にはるかに満たない光源だそうで、私たちにしてみるとかなり暗かったようです。しかしそのやわらかな光のなかで反射率の少ない和紙にほどこされた、雲母(きら)摺りや空押しの陰影の美しさを楽しんだ…想像するだけでも、江戸時代の人たちはなんて贅沢な時間を持っていたのだろうと思います。さらに余談ですが、浮世絵の技術を発展させたことで外せないのが春画の存在だそうですね。
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by tsukinoha | 2005-06-17 05:31 | 展覧会

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