たまゆらデザイン日記

400 川瀬巴水、その作品の魅力と渡辺版画店に伝わる逸話

先日の日曜日、大田区立郷土博物館で開催中の川瀬巴水展の企画の、渡辺木版美術画舗の渡辺章一郎氏の講演会に出かけてきました。定員80名の会議室は立ち見がでるほど大盛況。平均年齢層は私よりも高いとみました。134点の画像を映写しながらの講演は約2時間近くにも及び、大変充実したものでした。すでに記憶が曖昧になってきている部分もありますが、わかる範囲で記録してみました。
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川瀬巴水、その作品の魅力と渡辺版画店に伝わる逸話
新版画と川瀬巴水の魅力

大田区立博物館 講演会
2007年11月18日
(株)渡辺木版美術画舗
代表取締役 渡辺章一郎

〈序〉
写真 川瀬巴水(26-27歳) 1910年(明治44年)頃
歌磨、写楽、北斎、広重

美人画、役者絵などで隆盛を極めた江戸浮世絵。しかし人物には“賞味期限”がある。対し、風景を主題とするものは多少時間が経っても変わらない。

〈末期の浮世絵〉
日本画に近い作品
揚州周延、山本昇雲、鏑木清方

〈浮世絵風 新作版画〉
日本画と浮世絵の中間のような作品
高橋松亭、小原祥邨
2年前、大田区立郷土博物館において、世界初の高橋松亭の展覧会が行なわれた。

〈初期の創作版画〉
江戸期の最高の技術をもった職人が多くいた時代。が、絵師がおらず、全体の作品としての魅力が生まれなかった時期。一方で自分で絵を描き、自分で彫り、摺るという創作版画が誕生。抽象画も出現(恩地孝四郎)。
山本鼎、戸張孤雁、恩地孝四郎

〈初期の創作版画〉
「版画」という言葉が定着しはじめた時代。(江戸時代では「錦絵」と呼んでいた)
カペラリー、橋口五葉、伊東深水、川瀬巴水、笠松紫浪、吉田博、・・豊国(人物)北斎・広重(風景)らの江戸時代の浮世絵作品と比較しながら
渡辺庄三郎(渡辺版画店を立ち上げる。章一郎氏の祖父)の声かけに最初に賛同したのは皮肉にも外国人だった。樋口五葉など後に独立して工房を持ち、彫り師摺り師を抱えるものが出てくる。樋口五葉は41歳の若さで夭折。伊東深水の『対鏡』のバックの紅色は20回くらいの摺りを重ねている。この頃、渡辺版画店から川瀬巴水のデビュー作『塩原おかね路』が。

〈関東大震災後の新版画〉
関東大震災での火災によって、貴重な資料や版木がすべて消失。それまでの「とにかくよいものを」の、採算度外視の製作は不可能となり、売れる版画を製作せざるを得なくなる。
川瀬巴水「東京十二景・芝増上寺、馬込の月」「東海道風景選集 日本橋(夜明)・・日本橋に高速が架かっていなかったらの引き合いによく出される。他、山本耕花、名取春仙、高橋弘明(松亭)、小原祥邨、伊東深水、笠松紫浪の作品。
写真 川瀬巴水 1939年(昭和14年)7月


〈昭和期の創作版画〉
恩地孝四郎『地下鉄』など、時代を反映させるモチーフも数々登場。
前川千帆、深沢策一、藤森静雄、藤牧義夫、小泉葵巳男、織田一麿

〈昭和初期の海外展覧会〉
写真 日本版画協会パリ展の会場 1934年(昭和9年)
写真 ポーランド大使を迎えての会食 1934年(昭和9年)

大変好評だったパリ展と、一席を設けた場には、渡辺庄三郎、巴水、深水らが。

〈渡辺版以外の巴水作品〉
写真 川瀬巴水親戚一同 1936年(昭和11年)
酒井川口版、東京尚美堂、土井版、芳寿堂版など。他に鳥居言人、伊東深水


〈第二次大戦後の作品〉
物資の不足で版木の質が悪い。巴水作品ではみやげ的なものが多くなる。
写真 深水宅でもミュラー夫妻 1940年(昭和15年)
写真 渡辺庄三郎創業50年祝賀会 1956年(昭和31年)
巴水「時雨の後(京都南禅寺)」「富士の雪晴」「春の宵(上野東照宮)」「愛子の月(宮城県)」など。伊東深水「楽屋」「髪」


〈現代の創作版画〉
斉藤清、畦地梅太郎、笹島喜平、関野準一郎、中山正、海野光弘、前田光一、池田壮豊、藤田不美夫、木村義治、渡部正弥、杉山元次、西田忠重、並木一、天野邦弘、為金義勝、船坂芳助
写真 渡辺家三代 1961年(昭和36年)頃


〈最後にもう一度巴水作品〉
巴水の代表作を見ながら。(余談もここに記します)
・「東京十二題 大根がし」は現在の京橋付近。市場があったところ。震災後に築地に移った。
・「東京十二ヶ月 三十間掘の雪」銀座の三原橋付近。雪が降り始めると巴水はスケッチブックを取り出して一心に風景を書き留めていく。その様子を傘をさしかけじっと見守っていた渡辺庄三郎。意外にも巴水の銀座作品は少なく、他に「歌舞伎座」があるくらい。
・巴水の代表作とも言われる「馬込の月」。90年代初頭の大田区立博物館での「川瀬巴水展」では、「「馬込の月」に描かれた民家に住んでいました」という方が現れたとか。
・「東京十二景 芝増上寺」は海賊版が出るほどの人気。
・東京の雪景色が多いが、昔は結構積雪があった。
・伊東深水とは公私ともに交友のあった巴水。深水の娘・朝丘雪路さんは酒を嗜まない父と違いいつも酒の香りを漂わせていた巴水に「タコのおじちゃん」と言って親しんでいた。後年「大先生に向かって失礼な事を・・」と回想されたそう。

江戸から明治に入った時に見向きをされなくなり、その技術の粋を誇りながらも空前の灯火になった浮世絵版画。現代において人気が復活する一方で、皮肉なことに職人が激減。幸いなことに渡辺木版美術画舗ではこの春に2名の摺り師希望者が入門。なんとかその技術を次世代に引き継ぎたいと思っている。(渡辺章一郎氏・談)
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by tsukinoha | 2007-11-23 07:13 | 日本の伝統文化

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