たまゆらデザイン日記

353 コンクールでお会いしましょう

d0009581_6595093.jpgコンクールでお会いしましょう
名演に飽きた時代の原点
中村紘子
2003年
中央公論新社



図書館で借りてきました。
NHK人間講座『国際コンクールの光と影』を加筆改定した、ピアニストの中村紘子さんの著作です。中村さんは5月放送の「題名のない音楽会」にご出演、名ピアニストになる条件なるものを紹介伝授されておりました。が、正直あまりピンと来なかったのですが・・・書籍の方は思いがけずおもしろくて、ピアニストオンチの私でもあっというまに読んでしまいました(ちなみに私の読書時間は通勤電車内です)。他の著作も読んでみたいという衝動にかられました。

そのうちのひとつ、前記事つながりの話題で、思うところがあったので記しておきます。
1996年に「シドニー国際ピアノコンクール」の審査に招かれ、レセプションで、完成間近の「シャイン」の主人公のモデル、デヴィッド・ヘルフゴット氏を紹介された中村さんら。が、演奏は素人のようで招かれたコンクール関係者は当惑してしまった・・・という(本書151頁〜)体験談。
純粋な「音楽的感動」とは別に映画やテレビになどの手段によって増幅される「プラスアルファ」の感動が求められる時代なのかもしれない(「ヘルフゴット現象」と命名。デヴィッド・ヘルフゴット氏の他、フジコ・ヘミングさん、梯剛之さんらの名が)と指摘されています。そしてもし自分も先に映画を観ていたならば、素人っぽい演奏に感動したかもしれないと・・・(結局映画はご覧になってないとのこと)。映画公開後、アメリカで空前のベストセラーになった、ヘルフゴット氏のラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」のCDも、音楽関係者のあいだではさんざんの悪評だったとか聞きます。

コンクールでの「最も公平な採点法」をめぐっての結論が「そこに審査する人の心が加わる」限り「決定的な方法はない」(本書102頁)と同様に、人それぞれの心が大きく作用する感動がメディアによってもたらされる・・・そして「プラスアルファ」の刺激に支えられた音楽的感動は長続きしない(本書168頁)。
音楽然り。絵画然り。

しかし、ここでなにが「純粋」でなにが「純粋でない」と特定できるのだろうかという「素朴」な疑問がふつふつと沸き上がってきたのです。

d0009581_701593.jpgヘルフゴット氏のラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」は、確かに演奏は芳しいものとは言えないかもしれません(聴いてみました)。しかし『すべては愛に』の読後、ピアノをとても深く愛し、嫉妬やひがみなどという感情がない、常に前向きなヘルフゴット氏の姿に、そんなことはどうでもいいと思いました。
これが私の「心の作用」です。


クラシックCDの売り上げの激減に反してコンサートが増え続けているそうです。
オーディオマニアの出現で作り上げられた「ミスのないクリアな演奏」はすでに前世紀における過渡的な方法なのかもしれない、一方、ライヴの持つ「一期一会」の贅沢さを求められているのかもしれない・・・と、中村さんご自身の自問自答に共感をおぼえました。
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by tsukinoha | 2007-06-23 07:07 |

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