たまゆらデザイン日記

292 日本の音

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日本の音
世界のなかの日本の音楽
小泉文夫
1977年 青土社
(画像は1994年平凡社からの刊行されたもの)




白川静先生は、「口」(音よみでサイ。象形では、「口」の左右の先端は少し出っ張り、下部は丸みを帯びている)という文字は、身体の「くち」でなく、それは神にささげる「器」を意味するものと解読された。神前に供えられた「口(サイ)」に木の枝を叩き付けた行為が、(神への祈りが受け入れられることを)可能とする「可」。それでも「許可」がおりないときは、さらに「可」を重ねて、大声で神に威嚇をする・・それが「歌」。
「歌」は人の心を癒すために生れなのではなく、神への訴えを意味したのです(『神さまがくれた漢字たち』p61より抜粋)
「音」という字の上部「立」は、限られた特権を持つ者だけに許された厳粛な儀式に望む人の姿。下部の「口(サイ)」に入る横線は、神の訪れを告げる幽かな響きを示したものと考えられる。つまり、「訪れ」とは「音擦れ」のことであったのかもしれない。

と、長めの助走を経て、やっとこさ本題の『日本の音』に入るわけですが・・・こうやって言葉のひとつひとつの意味を探るだけで、あっというまに時間が過ぎていきます。

明治以降入ってきた西洋音楽は、現代の日本においては当たり前のように毎日どこかで鳴り響いています。日本人でありながら自国の伝統音楽のことについて知る者は、一体どのくらいいるのだろうかというおかしな事態に見舞われていることに気づくことすらない日常(もちろん私もです)。または手の届かない化石のような文化財的扱い。絵画や工芸はまだしも、音という目に見えないものについては、一旦失われてしまったら取り返しのつかないことになってしまいます。

さて、さまざまな文化同様、日本の伝統楽器もまたほとんどが中国から渡ってきたものが元になっているそうです。年月かけて日本流に改造されていくのですね。
『神さまがくれた漢字たち』のなかでは『論語』に記される盲目の楽人(がくじん=演奏者のこと)に孔子が細やかな配慮をしているのを通して、当時盲目の「瞽史(こし)」を尊重する気風がしみついていることがわかるとありました。日本では三味線の音色を響かせ続けた「瞽女(ごぜ)」です。本書『日本の音』においても面白い話を発見しました。
室町幕府の頃、平家琵琶を語る盲法師たちの職業ギルドが容認されていたというのですが、それは江戸幕府まで引き継がれていました。その生活を保護する意味から、あんま、はり、きゅう、地唄、箏曲といった職業も盲人たちのために専有としたそうなのです。「目」の「物語」が「音楽」の物語へとつながっていった(『神さまがくれた漢字たち』より抜粋) 経緯が、中国から日本へと脈々と流れているようで、大変興味深いものがあります。

〈目次〉
I
世界の中の日本音楽
日本音楽の今日と明日
日本文化のなかの伝統音楽
アジアのなかの東洋と西洋
II
日本の音 伝統音楽への入門
正月の芸能と民俗音楽/雅楽/仏教音楽/琵琶楽/能・狂言/尺八とその音楽/箏曲と三曲合奏/三味線音楽/大衆の音楽/現代邦楽
III
日本音楽の基礎理論
音素材/音組織/リズムと形式

「絵」を辿った歴史があるように、「音」という視点での歴史の振り返りがあることを気づかさせてくれる一冊。そして『日本の音』が過去の遺物の集大成本になってしまう恐れを少なからず感じてしまいます。
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by tsukinoha | 2006-12-17 07:20 |

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