たまゆらデザイン日記

281 遠野物語

先日放送の〈NHKその時歴史が動いた〉のテーマは、『日本を発見した日本人 柳田国男・「遠野物語」誕生』。「遠野物語」が誕生するまでの柳田自身のいきさつがとても興味深かい内容でした。

明治政府の新進気鋭の農政官僚だった若き柳田。「農民ばかりが何故貧しいのか」これには幼い頃経験した飢饉や農村で見た間引き絵などの原体験が元なっていました。貧しさから農民を救い出したいという思い。柳田は農の近代化・・・自立できる農業に意欲を注ぎます。しかしそんな思いで全国の農村を視察していた柳田に、ある日転機が訪れます。
宮崎県の山村、椎葉村(しいばそん)。ここでは古くから焼き畑農が続けられていました。焼き畑は稲作以前にはじまったと言われる古来からの農法で、山村の木を焼き払い、その灰をすき込んで雑穀などを育る自然の農法。灰が肥料となるわけです。1年目にそば、2年目にヒエやアワ、3年目にあずき、4年目に大豆。そして4年の輪作を終えると放置して山の地力が自然に回復するのを待つ。昔からの知恵が結集した焼き畑は、村人が助け合いながら連綿と続けられていたのでした。
この焼き畑に加え、古来からの儀礼を守ったシシ狩りが行われていました。月日によって入って良いとされる方角が決まり、山の神の使いである犬とともに狩りし、獲物を捕らえると山の神に感謝をする儀式が執り行われる。この椎葉村の人々の質の高さと精神性、山で富をいただくという畏敬の念に溢れた生活の様に、画一的な農の近代化を掲げていた柳田は衝撃を受けました。古来からあった伝統文化の中に日本人の歴史がある。それを見極めずして、国を変える解答など出てくるはずがない・・と。

折しも椎葉村に訪れた同じ年に、ある男から民話を聞かされる機会がありました。その男の出身は岩手・遠野。100を下らない民話が口伝によって現代へと伝えられていたことに驚きます。一方で、画一的で急激な近代化の波は地方にも押し寄せ、遅れているとされた農村の伝統的な生活文化を、捨てさせはじめようとしていた状況に、柳田は危機感に襲われた・・・今こそ失われゆく姿を書き留めなければならない・・・こうして「遠野物語」は誕生しました。

番組はゲストの作家・立松和平さんがレポートする椎葉村や遠野のお話を織りまぜながらの内容でした。立松さんは2週間前の「新日曜美術館」にもゲスト出演されていました。その時は正倉院の宝物への思いをかみしめながらお話されていたのが印象的でした。今回もとても朴訥なふうでいて気持ちに響いてくるお話をされていました。こんな感じで締めくくられていました。

私は「遠野物語」を人生の書として読んできた。「遠野物語」の冒頭はこうはじまる。

この書を外国に在る人々に呈す

この“外国”は地理的な外国ではない。柳田の時代に対する態度だった。私たちの精神の根底には伝承の物語がある。それをを忘れたら行くところがなくなるぞと。明治時代に柳田が抱えていたであろう危機感を我々のもう一度考えるべきで、現代は柳田の時代よりももっともっと深刻なのではないだろうか。自分たちは一体なんなのだろうか。アイデンティティが必要な時代なのだろう。だからこそ「遠野物語」はますます輝きをもってくるのだと思います。

d0009581_1334562.jpgこちらはおまけ。
映画「遠野物語」。
昭和57年。主題歌は岩手出身のあのグループです。
ジャケットはオシラサマですね。

忘れないで きっと
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by tsukinoha | 2006-11-11 13:39 | 随想

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